「核燃料サイクル」という“まやかし”

原発利権屋たちは、当然、「脱原発」など馬耳東風だ。「核燃料サイクル」事業に向けても、何としても再開に漕ぎ着けたい思惑で動き出している。


東京新聞 2012年1月12日 07時02分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012011290070136.html

再処理工場 MOX燃料工場 批判の中 再開着々

画像
ガラス固化体製造試験が再開される青森県六ケ所村の再処理工場内部=日本原燃提供

 福島第一原発事故を受けた新たなエネルギー政策が決まっていないのに、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」事業の中核的な二施設で、試験運転や建設を再開する動きが出てきた。核燃料サイクルは中止になる可能性があり、そうなれば不要な施設となる。専門家からは批判の声が出ている。

 核燃料サイクルをめぐっては、本紙の調べで、四十五年間に少なくとも十兆円が投じられたことが判明。電気料金の一部が主な原資となっているが、サイクルが完成するめどは立っていない。今夏をめどに決まる新政策でも、核燃料サイクルの存廃が最大の焦点だ。

 福島第一の事故を受け中断された事業が再び動きだすのは、使用済み核燃料から再利用するプルトニウムとウランを取り出す再処理工場(年内に完成予定)と、取り出したプルトニウムなどを新たな核燃料につくり直すMOX燃料工場(二〇一六年に完成予定)の二つ。両工場とも電力各社が出資する日本原燃が青森県六ケ所村で運営する。

 再処理工場では十日、プルトニウムなどを取り出した後にできる高レベル放射性廃液をガラス固化体にする溶融炉で、温度を上げる「熱上げ」がスタートした。まず放射性物質を含まない模擬廃液で試した後、実際に使用済み核燃料を使って試験する。

 一方のMOX燃料工場では、原燃が早ければ三月にも建設工事を再開するという。

 しかし、新たなエネルギー政策が定まらない中での再開はさまざまな問題がある。

 再処理工場では、二つある溶融炉のうち、実際に使われて極めて高い放射能に汚染されたのは一つだけだが、今春以降はもう一方の炉も試験する予定だ。原燃は「準備が整い次第、試験を再開したいと考えていた」とコメントしている。ただ、核燃料サイクルが中止になれば、厳重な管理が必要になる高濃度の放射性廃棄物を増やすだけの結果となる。

 京都大原子炉実験所元講師の小林圭二氏は「高速増殖炉『もんじゅ』の稼働が(事故で)つまずいており、再処理工場を動かすこと自体に意味がない」と指摘。見直し議論が進む中で「試験再開は世の中の動きと隔絶している」と批判する。

 MOX燃料工場の建設工事も、同様に政策が変われば、不要の施設となるだけ。

 十一日の原子力委員会小委員会で、原子力資料情報室共同代表の伴英幸委員は「議論の最中に工事が進むのはおかしい。仮に核燃料サイクルが中止になれば政策変更に伴うコストが増える」と指摘。同委として工事再開を見合わせるよう提言することを求めた。

 ただ、同委事務局は「新しい政策が決まるまでは、今の政策が生きている。事業者は現政策に基づいて工事を行っている」と説明。提言を出すことは考えていないとした。




東京新聞は、執拗に脱原発の姿勢で関連記事を掲載し続けている。それはそれで一応の評価はできるが、どの記事も原発が内包する本質の問題点について触れることはしない。即ち「核武装」との関係である。日本の原発推進派の本当の目的は、核燃料再処理、ウラン・プルトニウム抽出、高濃縮化という「核燃料サイクル」を国内で可能にしておくことで、何時でも造れる準備できるという「核武装」の潜在能力を常に保ち続けることにある。これは、自民党政権の時代から連綿と引き継がれており、現民主党政権もこれを受け継ぎ踏襲している。よって原発推進派にとって「核燃料サイクル」は、「核武装」能力を内外に示し、それに伴う利権を維持したいがため、是が非でも再開・再稼動させるということが根底にある。

東京新聞も他のメディアと同様で、この事には一切読者に伝えることはしない。記者たちは全く知らないはずはないので、分かっていても原発利権屋や政府から圧力がかかり、伝えたくても伝えられないのだろう。そこで、最近読んだ本の「原発と権力」(山岡淳一郎著)から 以下の文章を引用しておきたい。


「原発と権力」 山岡淳一郎著

終章 21世紀日本の原発翼賛体制

核保有に等しい原発の存在

 「我が国のプルトニウム管理状況」(原子力委員会発表)によれば、2009年末の国内、海外に保管中の全プルトニウム量は34.19トン。国際原子力機関(IAEA)は、プルトニウム8㎏(=有意量)の不明は原爆一個に匹敵するとみる。この計算を単純にあてはめれば、日本の保有プルトニウム量は原爆4200発分以上である。
 使用済み核燃料中に合まれるプルトニウムの量は、米国513トン、フランス227トン、日本は136トンで第3位だ。この使用済み燃料を再処理し、高速増殖炉「もんじゅ」で使えば、同位体比率99.8%の超軍用プルトニウムを生産できる(核開発に反対する会編『隠して核武装する日本』)。政府は半世紀後でも完成するかどうかわからない高速増殖炉の開発を続けるという。核オプションを手放したくないようだ。

 しかし核兵器は、あくまでも禁じ手だ。開発しても使えない。日本が核武装すればアジアの緊張は高まり、一触即発の状態に陥る。中国との対立は決定的となるだろう。
 中国の覇権を抑えたい米国は、日本を「代理」に見立て限定的に核武装するのを容認したともいわれる。80年代に「もんじゅ」や、軍用プルトニウムを抽出する特殊再処理工場(RETF)の建設を認めたのは、その証とされる。
 日米同盟を額面通りうけとれば、もしも日本が中国に核攻撃された場合、米国は「核の傘」で守らねばならない。しかし米国が中国を攻撃したら、大戦争に突入する。そこで米国は、日本に自分のことは自分でやってくれ、と限定的な核武装を認めた、というのだ。その失先に、もんじゅはナトリウム漏れ事故を起こして運転停止。東海再処理工場の火災事故で特殊再処理工場の建設は中断する。口でいくら核武装を唱えても、身体がついていかない。技術が伴わない。そんな状態が続いたのだった。

 麻生外相の核兵器発言が飛び出しだのは、もんじゅが再稼働に向けて、ナトリウム漏洩対策の本体工事に着手した後だった。タイミング的にそろそろ核武装を切りだしてもいいと判断したのだろうか。だが日本が米国の「代理」で核兵器を持って中国と張り合えば、国家の自立は崩れる。変転する国際情勢のなかで、日本が未来永劫、米国と行動をともにする、などと思い込むのは思考停止にちかい。
 日本が核拡散防止条約(NPT)を脱退して核武装すれば、世界の孤児となるのは明らかだ。狭い国土に原発を50数基も抱え込む日本は、もはや戦争を行える国ではない。

 核武装の議論を提起した中川昭一自民党政調会長は、北朝鮮が日本を攻撃するのであれば、核兵器など使う必要はない、原発のどれかをミサイル攻撃すればいい、と講演で語った。図らずも東日本大震災で、中川が指摘した原発の弱さが世界中に知れ渡った。頑強につくられた原子炉建屋を破壊しなくても、電源機能を喪失させるか、運転制御室や冷却水配管を壊せば、原発はコントロール不能となる。中国や北朝鮮と対面する日本海側には、原発が30数基も集中している。



原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜 (ちくま新書)
筑摩書房
山岡 淳一郎


Amazonアソシエイト by 原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜 (ちくま新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック