「検察の罠」 小沢一郎抹殺計画の真相・1

「検察の罠」
小沢一郎抹殺計画の真相  森ゆうこ著

<一部抜粋①>

仕組まれた代表選の敗北

 敵はマスコミだけではなかった。代表選の経過では、信じられないことがいくつも起きた。
 まず、岡田克也外相や前原誠司国交相といった当時の現職閣僚が、公務そっちのけで中間派議員の地元に出向き、菅総理応援の選挙運動を展開したこと。自民党の総裁選では、現職の閣僚は選挙運動から一歩引くのが慣例だった。公務があるのだから、当然である。
 岡田さんや前原さんが選挙運動に精を出している最中に、9月7日の尖閣諸島中国漁船衝突事件が起き、対応の遅れを批判されることになった。

 また、小沢支持を表明している議員や、態度を明らかにしていない議員のところには、連日「小沢を支持するな」という恫喝まがいの電話やファックスなどがあった。「組織的」な働きかけだったと感想をもらす議員もいた。
 もっと驚いたのは、14日の本投票の前に「事前投票された党員サポーター票では、トリプルスコアで菅総理が勝っている」という情報がマスコミに流れたことだ。

 党員サポーター票の帰趨は、本来マスコミが予想できないはずである。党員サポーターの名簿はそれぞれの支部長しか持っておらず、新聞やテレビ局は調査のしようがないからだ。もし、党員サポーターに電話調査ができるとしたら、当本部の誰かがマスコミに党員サポーターの名簿を不正に横流ししているということになる。
 真偽のほどは定かではないが、この情報によって、党員サポーター票は小沢の負け、という構図を作られてしまった。そうなると、誰もが勝ち馬に乗ろうとする。結果は、721ポイント対491ポイントで、そのまま菅直人代表が再選を果たした。

 不可解なことに、大勢を決した党員サポーター票は、開票後に第三者が確認する間もなく、焼却されてしまった。しかし、国会議員票では、菅直人206票、小沢一郎200票と互角だった。マスコミによる小沢バッシングの嵐の中、200人もの議員が、さまざまな圧力に屈せず、小沢先生に票を投じたのである。

 三度の不起訴処分にもかかわらず、やまない小沢バッシング。そして、代表選での敗退。
 母親譲りの楽天家で、どんなに追い込まれても「まっ、いいか」というのが口癖の私。どんなときでも気持ちを切り替え、新たな活路を見いだせると自負していたのだが、さすがの私もこの状況に、「この国はもうダメなのではないか」という絶望感を感じていた。

 そこへ追い打ちをかけるように、10月4日、東京第五検察審査会が二度目の起訴議決をしていたことが公表された。聞けば、議決が行なわれたのは代表選の当日、9月14日だったという。
 私はもう驚きはしなかった。小沢側近の人たちは、起訴議決はないだろう、と見ていた。楽観的な情報しか入ってこなかったからだ。

 けれども、私はまったく信用していなかった。
 西松建設事件からこちら、楽観論はすべて否定されてきたではないか。検察を剌激してはいけないからと、真正面からの闘いを避け、事態を楽観し続けた結果、陸山会事件はここまで来てしまったではないか。
 わざわざ代表選にぶつけたとしか思えない起訴議決の報を聞いても、私は「ああ、どんなこともできるんだな」と改めて思っただけだった。

検察審査会の正体

 すっかり落ち込んでいた私が、検察審査会について調べてみようと思ったきっかけは、起訴議決をした東京第五検察審査会の平均年齢の発表が何度も変わっている、という話を耳にしたことだった。
 最初に発表されたのは、30.9歳。審査員が有権者のなかから無作為に選ばれるとすれば若すぎる。次に、「11人の審査員の年齢を足しあわせて11で割るべきところ、1人分を足し忘れていた」という理由で33.91歳に変更。さらに、年齢をカウントする基準日が変わったとして34.55歳に変更したという。

 これでもまだ若すぎるが、それ以上に不思議なのは、これが4月27日に1回目の起訴相当議決を出したまったく別の11人の審査員の平均年齢と、小数点第2位までまったく同じということだった。
 いったい、どういうことなのか。起訴議決をした検察審査会で何かあったのか。いや、そもそも本当に検察審査会は聞かれたのか? 検察審査会の正体とは?

 私は、検察審査会の謎を解くために、調査を始めることにした。
 調べ始めると、すでに私と同様の疑問を持って独自に情報収集・分析を始めている市民の方が複数いて、ネット上でその成果を発表していることがわかった。それを参考にさせてもらいつつ、私は検察審査会を管轄する最高裁判所の官僚や、検察審査会法の担当者である法務省官僚を呼んで話を聞いた。

 検察審査会法第3条には、検審は「独立してその職権を行う」と書いてある。しかし、実際には最高裁の管轄のもとにある。予算を管理するのは最高裁だし、職員は裁判所のスタッフが出向しているのだ。
 そこで、検察審査会について調べるためには、最高裁判所の事務総局と刑事局という部署のスタッフを呼んで話を間くことになる。私のところに来た担当の方々は、30代半ばくらいで、みな判事の資格を持つ、大変優秀な人たちだった。

 それまでの調査で、検審が毎月最高裁に提出している審査期間、会議の回数、検察官など出席者の延べ人数、審査補助員の延べ出頭数など、審査会の開催状況を事件ごとに報告する「審査事件票」という文書が存在することがわかっていた。日刊ゲンダイが起訴議決を出した東京第五検察審査会について情報公開請求をしたところ、審査日時はおろか、すでに発表されている9月14日の議決日までご丁寧に塗りつぶした、まるで「海苔弁」のような審査事件票が届いたという。
http://my-dream.air-nifty.com/siryou/files/101200.pdf

 検察審査会がいつ、どのように行なわれたのかを知るためには、まずはこの黒塗りをはずした審査事件票を見てみたい。そこで、最高裁に「審査事件票というのがあるらしいじゃないですか。個人情報のところは仕方がないけれど、それ以外の部分は黒塗りを取ってきてほしい」と頼んでみた。
 次の日、どうなったかと尋ねると、「ちょっと待ってください」と言う。さらに何日か同様に催促を繰り返すと、黒塗りをはずした審査事件票は「出せません」という返答があった。
理由を問うと「非公開だからです」と言う。

 そこで私は、もう一歩突っ込んでみた。最高裁は各検察審査会事務局に対して、予算の適正な執行状況確認と統計データの集約のため、通達を出していろいろな報告を要求しているという。審査事件票もその一つだ。
「だとすると、おかしいね。通達ということは命令でしょ。何の権限があって命令しているの?」私は最高裁の担当者に質問した。
「予算の計上のために必要があるので」
「ああ、そう。それなら私も一緒。立法府の一員として、予算委員会の理事として、予算が適切に執行されているかをチェックする権利と責任がある。個人情報はいいから、それ以外の部分は黒塗りをはずして出して」そう言うと、担当者は「持ち帰ります」と言って帰っていった。

 また何日かすると、「部内で検討した結果、やっぱり出せません」と言ってくる。さらに私は矛盾を指摘する。
「おかしいでしょう。通達して報告させているということは。検察審査会は独立しているということは、どこからも命令を受けないはずですよね」
「そうです」
「ということは、非公開の原則と独立の原則だけはどうしても守らなければいけない、と。だから出せないと。この原則は最高裁も守らなければいけませんよね」
「そうです」
「ということは、最高裁が統計調査、あるいは予算執行のための調査として報告を求めている資料というのは、非公開の原則の対象ではないものを報告させているんですよね?」
「そうです」
「じゃあ私にも見せられるじゃない。もし審査事件票が非公開だとすると、最高裁判所は検察審査会法に反して、非公開の情報を検審に命令して無理やり出させたってこと?」
「違います」
「それなら、出せますね。最高裁と同じ目的で私が使うことには何の問題もありませんね」

 私は、こうした最高裁とのやりとりを、そのころ始めていたツイッター上で逐一発信していた。記録の目的に加えて、最高裁にちょっとしたプレッシャーを与えるつもりだった。たとえば、先ほどのやり取りなら次のような具合だ。

《2010年12月10日(金)21:06
最高裁と20時近くまで議論。検察審査会が毎月最高裁に提出する審査事件票について。以下その時のやり取りを報告する。》
《2010年12月10日(金)22:01
【中略】ここで本日の議論の中心。最高裁はどのような法律的根拠に基づいて検察審査会事務局長に通達を出したのか? 検察審査会法第3条:検察審査会は、独立してその職権を行う 最高裁に属していない。完全に独立した機関。(続)》
《2010年12月10日(金)22:13
最高裁:予算と人事権は最高裁にある。従って予算の適正な執行状況確認と統計データの集約のため 私:審査会法弟3条の「独立性」及び第26条の「非公開の原則」に違反しない通達か? 最高裁:「独立性」と「非公開の原則」に違反しない 私:それなら、提出された事件票を黒塗りする必要はない》
《2010年12月10日(金)22:21
私:「非公開の原則」に違反しない範囲で提出されたものを黒塗りにして、予算の執行状況を調査する立法府の予算委員に対して提出することはおかしい。もし、非開示の部分も提出させたのなら、最高裁が検察審査会法に違反したことになる 最高裁……》

 審査事件票は非公開ではないと認めるか、最高裁が検察審査会法に違反したと認めるか。二つに一つの選択に、最高裁が追い込まれていく様子がよくわかるだろう。
 ツイッターでやり取りを公開するのは、実際かなりのプレッシヤーになったようだ。最高裁の担当者からは、「先生のツイッターとブログを見るのはすでに我々の業務です」と言われたこともある。
 こうして、私は「海苔弁」の審査事件票から黒塗りを外させることに成功した(13、14ページ写真参照)。
http://my-dream.air-nifty.com/siryou/files/101222.pdf

私との議論に負けた担当者は、恐らく上司に怒られただろうと思う。
 彼らの名誉のために言っておくが、最高裁のスタッフは真面目で優秀であるがゆえに議論に負けたのである。私がいくら理詰めで追及しても、いい加減にごまかそうとすればどうにでもなる。彼らは真面目で優秀だからこそ、法律に則って、論理的に理由を並べられれば拒むことができなかった。私は、彼らは決して悪い人間ではないと思っている。

「検察の罠」 小沢一郎抹殺計画の真相・2へつづく
http://nekotomo.at.webry.info/201208/article_5.html

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