核燃料基地 六ヶ所村・5

原発の発電後に生み出される使用済み核燃料には、燃える際に生成されたプルトニウムと燃え残りのウランが含まれている。これを再処理してプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて新たな燃料に加工したものがMOX〔Mixed Oxide(混合酸化物)〕燃料である。この燃料を燃やして既存の原発で発電するのが「プルサーマル発電」だ。プルサーマルというのは、「プルトニウムをサーマルリアクター(軽水炉)で利用する」という意味の造語だそうだ。2009年に玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で初めて導入され、伊方原発(愛媛県伊方町)3号機、高浜原発(福井県高浜町)3号機のほか、311の地震・津波後に爆発を起こした福島第一原発3号機でも実施されていたといわれている。



東京新聞・こちら特報部 2011.2.16

核燃料基地 六ヶ所村

「使用済み」からMOX燃料

 青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地の一角に建設中の混合酸化物燃料(MOX燃料)工場。MOX燃料は、ウラン資源の有効利用を目的としたプルサーマル発電で使われる。毒性の強いプルトニウムを使用することなどから危険性を指摘する声も根強い。国が核燃料サイクルの重要な柱と位置付けるMOX燃料とプルサーマル発電とは、いったいどういうものなのか。

 六ケ所村にあるMOX燃料工場の建設現場。周辺には、使用済み核燃料再処理工場など核燃料サイクルの拠点施設が立ち並ぶ。MOX燃料工場は二〇一〇年十月に着工し、総工費は約千九百億円。約七千二百平方メートルの敷地に地下二階、地上三階建ての建物が一六年三月に完成予定だったが、工事は地下部分を掘り下げた段階でストップしている。
 もともと冬季は積雪の影響で工事をしておらず、その最中に東日本大震災が発生。作業員も重機も被災地へ回った。核燃料サイクル基地を運営する日本原燃は「春ごろから工事を再開したいと考えている」(東京事務所広報グループの伊藤滋宏部長)と説明する。
 MOXとは、「Mixed Oxide(混合酸化物)」の略。原発で発電した後に生み出される使用済み核燃料には、燃える際に生成されたプルトニウムと燃え残りのウランが含まれている。このプルトニウムを取り出してウランと混ぜて新たな燃料に加工する。つまり、使用済み核燃料の再利用だ。

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 まず、再処理工場で、使用済み核燃料を溶かすなどして、放射性廃液などを分離。ウランとプルトニウムを取り出し、粉末の「ウラン・プルトニウム混合酸化物製品(MOX粉末)」を作る。
 これをMOX燃料工場に運び、ウラン粉末と混ぜてMOX粉末の割合を全体の4~9%に調整する。一七〇〇度以上の高温で焼き固めるなどして小さな円筒形のペレットに加工。それを組み立てると長さ四メートルほどの核燃料集合体が出来上がる。
 再処理工場は現在、最終段階の試験に向け調整中。再処理工場が本格稼働すれば、年間約八百トンの使用済み核燃料の処理が可能になる。そこから約八トンのプルトニウムを取り出すことができる。MOX燃料工場では、原発十三~十五基分に当たる約百二十トンHM(ヘビーメタル)のMOX燃料を製造できる。HMとはウランとプルトニウムの質量を表す単位で、一般の重量に換算すると約百四十七トンに相当する。

プルトニウム削減不可欠
毒性、ウランの10万倍


 プルトニウムはウランの十万倍とされる強いアルファ線を発する。肺などに入ると長期間にわたって内部被ばくするため、安全対策にも細心の注意を払うという。建物は原発と同じ耐震強度で設計。すべての工程は、「グローブボックス」と呼ばれる密閉された地下の空間の中で進められる。自動運転と遠隔操作が基本だが、どうしても機械ではできない細かな作業や検査のみ、ボックスの外からグローブ(手袋)に手を入れて行う。
 伊藤部長は「気圧を外部より低くするなどして、気密性は完全に保てる。排気も直列に四つつなげたフィルターを通すようにし、有害物質は外に出ない構造になっている」と話す。
 通常の原発で使われる核燃料(ウラン燃料)は、95~97%を燃えない「ウラン238」、3~5%を燃える「ウラン235」が占める。一方のMOX燃料は、燃えないものを含めたプルトニウムの割合が4~9%。大ざっぱにとらえれば、ウラン235を反応しやすいプルトニウムに置き換えたものと言える。

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 通常の原発の原子炉でも常にプルトニウムは生成されている。中性子を吸収したウラン238の2%がプルトニウムに変化する。発電量の七割はウラン、三割はプルトニウムによるもので、「プルサーマルは決して新しい技術ではない。発電に伴ってプルトニウムができるか、最初から入れるかの違い」(伊藤部長)と強調する。
 MOX燃料は、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)でも使われていたが、トラブルが相次いで停止中。それを通常の原発でも使おうというのがプルサーマル発電だ。「プルトニウムをサーマルリアクター(軽水炉)で利用する」という意味の造語で、日本では二〇〇九年に玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で初めて本格導入された。伊方原発(愛媛県伊方町)3号機、高浜原発(福井県高浜町)3号機のほか、水素爆発を起こした福島第一原発3号機でも実施されていた。

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震災の影響で工事が中断している大間原発。完成すれば
世界初のフルMOX運転の原発となる=昨年5月、青森県大間町で


 建設中の大間原発(青森県大間町)は、世界初のMOX燃料のみで運転する新型炉となる計画だ。
 核燃料は、毎年一定の割合を入れ替えている。原子力安全委員会は一九九五年、ウラン燃料用の原子炉で「三分の一程度をMOX燃料としても問題はない」との見解を示した。玄海や伊方などでは徐々にMOX燃料に入れ替え、おおむね四年で全体の三分の一となるよう進めている。

プルサーマルで活用
ウラン資源を節約


 国がMOX燃料とプルサーマル発電を推進してきた理由は何か。
 一つは、「ウラン資源は有限で、いずれは枯渇する」(伊藤部長)という考え方からくるプルトニウムの有効利用、つまり節約だ。日本はウランをすべて輸入に頼っており、貴重な資源。ただ、MOX燃料に加工する方がコストが割高になるとの指摘もある。
 もう一つは、国際公約を順守するという側面もある。
 内開府が昨年九月に公表したデータでは、一〇年末の段階で日本が国内外で管理しているプルトニウムは約四十五トンに上る。日本は核拡散防止の観点から「(核兵器に転用できる)プルトニウムを必要以上に持たない」と宣言しており、プルトニウムを処理して減らすことを迫られている。

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六ケ所村のMOX燃料工場完成予想図

 プルサーマル発電は、その危険性がたびたび問題視されてきた。MOX燃料はウラン燃料に比べて融点(溶け出す温度)が低いことに加え、エネルギー量の多い中性子が増えるため、核分裂を止める制御棒の効きも悪いとされる。ただ、電力各社が公表している資料などでは、ウラン燃料の融点が約二八〇〇度なのに対し、MOX燃料は約二七三〇度とそれほど変わらず、制御棒の効き目もほとんど差はないとしている。
 現在、玄海など三つの原発で使われているMOX燃料は、日本の原発から出た使用済み核燃料の再処理を委託したフランスから燃料集合体の形で返還されたものだ。「MOX燃料加工技術の確立は、原発を稼働させている国の責任として不可欠なもの」とある原子力関係者は語る。プルサーマルをやらないとしたら、プルトニウムをどう処理するのかといった問題も出てくる。

デスクメモ
 原発では、「効率」という言葉が重要な意味を持つ。電力会社の億単位の利益に直結するからだ。プルサーマルも有効利用の発想から出てきた技術だ。世界で四十年以上の実績があるというが、MOX燃料工場はフランスと英国、茨城県東海村の三ヵ所にしかない。これは、何を意味するのか。




プルサーマルの導入当時、使用済み核燃料から取り出されたプルトニウムをMOX燃料にして利用していけば、究極のエネルギーサイクルが出来上がり、ウラン燃料のほぼ全量を輸入に頼り、資源に乏しい日本において福音をもたらすだろうと喧伝された。MOX燃料だけを使う高速増殖炉「もんじゅ」の開発もこの一環として位置づけられていた。さらに、日本は核拡散防止の観点から「(核兵器に転用できる)プルトニウムを必要以上に持たない」と宣言しており、プルトニウムを処理して減らすことを迫られていたこともあって、プルサーマルはまさにうってつけの発電方法だったわけだ。

しかし、現在この核燃料サイクルはうまくいっていないのは、今までのブログの記事に書いてきた通りである。猛毒でウランより危険なプルトニウムの扱いが大変なのだ。上記の原発以外は、地元の反対もあって実施されていない。また、「もんじゅ」は事故続きで現在停止中。いずれにしても、プルサーマルで使用されるプルトニウムの量などたかが知れている。そして問題なのは、再処理で貯まったプルトニウムが、内開府の11年9月に公表したデータでは、10年末の段階で日本が国内外で管理している総量として、約45トンに達しているということである。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo36/siryo2.pdf
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これは、べらぼうな量だ。あのお騒がせ北朝鮮でさえ保有量が40~50kg程度だといわれているが、北朝鮮の1000倍のプルトニウムを持つ日本は、いったい何発の核兵器の製造が可能なのだろうか。さらに、日本全国の各原子炉施設内や六ヶ所村などの再処理工場に保管されている、使用済み核燃料に含まれるプルトニウムの推定量は152トンに上ることが表からわかる。

だから、日本は「潜在的核兵器保有能力」を持っていると見なされて当然だろう。「いつでも核武装できるぞ」と、世界に向けて宣言し続けているに等しいと言える。

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