核燃料基地 六ヶ所村・4

天然のウランは、99・3%がウラン238で占められている。これは「燃えない」ので原発の燃料にならない。そこで、残りのO・7%に含まれている「燃える」ウラン235を取り出さなければならない。この作業が濃縮だ。

昨日のブログ記事に、イランが新型の遠心分離機を開発し、ウラン燃料を自前で調達できるようになったと書いた。いわゆる、原発用核燃料の濃縮技術が確立されたということなのだが、イランが独自に開発できる能力を持っていたとは思えない。この技術をイランはいったい何処から手に入れたのだろうか、謎である。

日本に於けるこの濃縮技術は純国産だといわれている。六ヶ所村では炭素繊維製の新型の遠心分離機が導入され、処理能力が4~5倍に向上したらしい。「燃える」ウラン235は、いとも簡単に核兵器に転用できてしまう。すでに原爆を保有するパキスタン・北朝鮮などは、この濃縮技術を手に入れており、その技術がイランへ流れたということだろうか。



東京新聞・こちら特報部 2012.2.14

核燃料基地 六ヶ所村

国産 機密の濃縮工場


 原発の使用済み核燃料から燃え残ったウランと新たに生まれたプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクル。その始まりに位置付けられるのが、ウラン燃料を作る濃縮工場だ。青森県六ケ所村に完成したのは二十年前の一九九二年。再処理工場と低レベル放射性廃棄物埋設センターとともに「核燃三点セット」と呼ばれる。核兵器の製造も可能となる技術のため、日本原燃の施設の中で最も多くの機密に包まれている。

 ウラン濃縮工場に入るには、再処理工場の入り□と同様に、金属探知ゲートをくぐる。その感度は極めて高く、肩凝り用に貼る磁気性の湿布にすら反応する。カメラは持ち込めず、「撮影は厳禁」と念を押された。
 案内してくれた日本原燃広報部の赤坂猛部長(五七)は「素人には複雑な機械としか映らなくても、科学者が見れば機器の形状などわずかな部分から、ウラン濃縮のヒントを得られる可能性がある。だから写真が流出するのは危険なのです」。
 ゲートからIDカードをかざして回転扉を開けて工場内へ。鉄製の扉を開けて階段を下りると、踊り場のような場所に縦一メートル、横五メートルほどの長方形のガラス窓があった。開閉はしない。一般には公開していないが、政府関係者やマスコミに対してもガラス越しに見える部分に限定している。
 目の前には、ウラン濃縮のための遠心分離機が縦、横に無数に並んでいた。プラスチック製のバケツを大きくしたような円筒状で、上部に取り付けられたパイプで、それぞれが連結されている。

燃えるウランを20年前から製造

 ここで濃縮するのはウラン235だ。オーストラリアやカザフスタン、カナダなどの鉱山から掘り出したウラン鉱石にある天然ウランには、二種類が存在している。

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 核分裂を起こしやすく、原発の燃料になるのがウラン235だが、天然に存在するのはわずかO・7%にすぎない。残りの99・3%は、燃料として使えないウラン238が占める。つまり、ウランは天然のままでは原発の燃料にはならない。
 ウラン235が核分裂して膨大な熱エネルギーを出すことを「燃える」と表現する。原発で燃やし続けるには、ウラン235の割合を3~5%に高めなければならない。
 ウラン鉱石は化学処理して精錬し、黄色い粉末状のウラン精鉱(イエローケーキ)を取り出し、フッ素を混ぜて六フッ化ウランに変える。これを海外から輸入し、日本原燃の工場で濃縮する。

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 赤坂部長の説明によると、濃縮には、二つのウランの重さの違いを利用する。まず、六フッ化ウランを六十度前後で温めて固体から気体にし、遠心分離機に注入する。 回転胴を回すと、重力の何千倍もの遠心力が発生する=図参照。外側には重いウラン238が少しずつ押し出される。一方、中心部分は軽いウラン235の濃度が高まった気体となり、これを複数の遠心分離機に移して作業を繰り返すことで濃度を高めていく。
 その後、濃縮六フッ化ウランを液体に溶かして均一化し、冷却して粉末にする。最終的に、茨城県東海村などの核燃料加工工場でフッ素を取り除き、焼き固めて原発の燃料に製品化される。

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レンズで拡大したウラン鉱石

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黄色い粉末状のイエローケーキ

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常温では無色の結晶の六フッ化ウラン

新型遠心分離機を導入
処理能力4~5倍に


 こうした基本工程は公表されているが、遠心分離機の台数や、配管のつながっている先などを尋ねると、「機密事項が多いのでお教えできない」と赤坂部長は続ける。
 「プルトニウム型原爆は、製造が難しい起爆装置が機密となっている。一方、ウラン型原爆は起爆装置は簡単に作れるため、ウラン235を濃縮すれば原爆ができてしまうからです」。つまり、ウラン濃縮の技術は原爆製造に直結している。
 日本原燃のウラン濃縮はもちろん平和的な利用に限定し、5%超の濃縮はしない。それが守られているかを、国際原子力機関(IAEA)が定期的に査察して確認する。だが、技術的には原爆の材料になる90%以上の濃縮も不可能ではない。
 実際にウランを濃縮するには、遠心分離機の大きさや重量、回転速度、時間、配分を知る必要があるという。「ウラン濃縮をやろうと思って断念した国も多い」と赤坂部長。現在、濃縮工場は七事業者が手掛け、参画する十二力国のいずれも「門外不出」で、どこからも協力を得られない。
 インドに対抗するために核兵器を開発したパキスタンでは、カーン博士が欧州の濃縮工場で働いて取得した技術から成功させたとされる。その技術はパキスタンから北朝鮮に流出した可能性が大きく、イランもウラン濃縮を進めている。
 日本での濃縮技術は純国産だ。旧動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が国家プロジェクトとして一九七二年から岡山県・人形峠の工場で実験を続けた。米国やフランスが用いるガス拡散法とは異なる遠心分離法を選択し、七六年に確立した。
 日本原燃は技術を譲り受けてウラン濃縮工場を建設した。稼働を妨げるような大きな問題は起きていないが、当初、停電を何回か起こしている。

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ウラン濃縮工場には複数の遠心分離機が連結して置かれている

 遠心分離機は動かし始めたら、寿命が来るまで止めないのが基本だ。止めると、微量のウラン化合物が機械に付着し、バランスが崩れて回転にむらができる。結果として、十年間使えるように設計されていたが、約八年で寿命を迎えたラインもある。
 それでも、最盛期の九八年には七つのラインが稼働し、九三~二〇一一年度の十八年間で、濃縮を終えた六フッ化ウラン約千六百八十七トンを出荷した。4%に濃縮したものが約二十三トンあれば、百万キロワット出力の原発を運転する一年間分の燃料となる。最盛期には、国内の原発が使う燃料の二割近くを賄った。
 ところが、一〇年十二月に全てのラインが寿命を迎え、ウラン濃縮工場は作業が停止していた。新たに導入する炭素繊維製の新型の遠心分離機の開発が遅れ、ようやく昨年末に旧型機との置き換えが始まった。処理能力は四~五倍に向上している。二〇年までには、年間約二百八十トンを処理できるように工場を再整備する方針だ。

コスト割高 電気料金に上乗せ

 現在、ウラン燃料は全て海外から輸入する。作業自体にはトラブルがほとんど起きていないウラン濃縮だが、ついて回るのがコストの問題だ。日本原燃は「商取引上の慣例で明かせない」と言うが、米国や欧州各国の工場の約二割増しとされ、最終的に電気料金に上乗せされている。
 だが、それも「国産化で」という政策的な判断による。同社東京事務所広報グループの伊藤滋宏部長(五二)は「核燃料サイクルは海外の影響を極力排除し、日本がエネルギーの安定供給を目指すものですから」と話した。

デスクメモ
 学者や技術者の楽しみは定期に開かれる学術会議に出席し、知見を披露して見聞きし、旧知を温めることだ。だが、濃縮ウランの技術者は国内外の会議や出張とも無縁という。機密の技術だけに交流もできない。イランの濃縮問題が世情を不安にさせる中、働かぬ遠心分離機を緊張感を持って眺めた。

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